勉強なんて必要ないという人もいますが、CAEを適切に実施する上で、ある程度勉強は必要だと私は思っています。勉強はなぜ必要なのか?そしてそれはどう有効なのか?について考えてみました。
現在のCAE関連のソフトウェアはある意味不完全といえます。それは現実に起こっている現象を完全に再現することはできないからです。これはコンピュータの性能向上によって将来的に解決できる問題もあるかもしれませんが、数値計算上の問題で本質的には解決できない問題もあるかもしれません。
コンピュータの性能に依存する問題としては解析規模(節点数、要素数などいわゆる自由度)の問題があります。私たちが取り扱う製品は多数の部品からなるシステムが多いですが、それらをすべてモデリングして解析することは到底不可能です。また、流体解析などでは小さい渦から大きな渦まですべて解像するには、かなり小さな要素サイズにする必要もあります。つまり、現実の現象を詳細に再現させようとすると解析規模が膨大になってしまいます。これにより解析時間も膨大になり、現実的な期間で答えを得ることができなかったり、そもそもコンピュータのリソース不足で解析できない等の多くの問題が生じてしまいます。したがって私たちは現実的な解析規模になるように、再現したい現象の本質を表現するのに最低限必要な要素だけにして解析を行います。流体解析ではそれに加えて乱流モデルなどの数値計算上のモデル化も行い、できるだけ少ない解析規模になるようにしています。
次に数値計算上の問題として代表的なものが、完全拘束や形状の不連続部に起因する応力集中部の評価に関する問題です。これも現実の状態を再現できないことに一部起因していますが、しっかり知識を持ち合わせていないと、過度な応力集中に惑わされ、適切な強度評価をすることができないこともあります。もしかしたら多くのテクニックを用いれば解決できる問題かもしれませんが、解析規模が増大したり、複雑化によってミスが多く発生したり、更には問題の本質が見えなくなってしまうこともあるでしょう。したがって私たちはそのような過度な応力集中に惑わされないように、母材応力をベースとした評価方法(ホットスポット応力など)を選択するなどして、簡易的ながら妥当な評価をできるようにしています。
CAEは単なるツールです。現実を完全に再現させることが目的ではなく、少なくとも問題の本質だけは評価できるようにして、設計に役立つアプトプットを最低限の工数で出せればよいのです。言葉で書くのは簡単ですが、それがしっかりできるようになるには相当な技術力を要します。このような技術力は実務で経験を積むことも重要ですが、やはり工学や計算力学についての勉強もある程度必要になると私は考えます。
勉強することで現在のCAEツールが抱える技術的な問題は解決しません。その点で勉強は無意味という人もいるでしょう。しかし、勉強することによってツールを扱う人の技術力が向上し、その技術力でそれらツールの抱える問題点をうまく克服することができ、ひいてはCAEを有効に活用できるようになると思います。 またこれは単にCAEの分野に限る話ではなく、より良い製品設計にも反映されることでしょう。そのために私たちは日頃から勉強して技術的知識を吸収していく必要があると考えています。
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