非線形の構造解析(
陰解法による静解析)において収束性を悪化させる原因は多数考えられますが、代表的な原因は、
1.座屈、
2.接触、
3.摩擦、と考えられます。
それぞれについての説明とその対応策について簡単にまとめたいと思います。
1.座屈座屈には大局的な座屈と局所的な座屈があります。
大局的な座屈とは構造全体の座屈モードに起因する現象で、荷重が変位の増加とともに減少してしまうような応答を示す状態です。このような応答は座屈だけでなく材料の軟化でも発生します。通常の静的な非線形解析では荷重を漸増させながら解析を進める手法(荷重制御)を取りますが、この現象が発生すると荷重が低下してしまうわけですから計算が成り立たなくなってしまいます。この対策としては弧長増分法を採用する方法があります。もし荷重ではなく強制変位でも解析の目的を満たすのであれば、そのような変位制御に切り替えてもよいかもしれません。
局所的座屈は構造の一部が局所的に座屈する現象です。大局的な座屈のように荷重が低下したりするようなことにはなりませんが、局所的に変形の速度が増してひずみエネルギが解放される現象が発生します。このような現象には人工的な粘性を与えて、解放されるひずみエネルギを粘性によって吸収する方法があります。しかし過度な粘性を与えると計算結果が怪しくなることもありますので使用には注意が必要です。システムが自動的に減衰値を決定するアダプティブな手法を採用した方がよいでしょう。
2.接触接触は非接触状態から接触状態への遷移時に急激な変化があるため、それ自体が非常に不安定な状態となります。接触時の収束性を改善するには荷重増分を小さくする方法の他、接触剛性を低くする方法があります。接触剛性は食い込み量に対する接触圧として定義します。これはかなり有効で計算時間も早くなります。しかし接触現象そのものの精度は落ちますので、接触現象がその解析の本質ではない場合に利用します。
3.摩擦摩擦も接触現象の一部ですが別項目としました・・。
摩擦のある接触の場合、荷重を与える順番により結果が異なる荷重経路依存性が発生することがあります。この場合、荷重増分を小さく設定する必要があります。また摩擦のある接触の場合、非接触状態と接触状態が連続的に繰り返すチャタリングという現象が発生することがあります。チャタリング現象自体を評価する場合以外は、できるだけチャタリングが発生しないようにすべきです。チャタリングを回避するためには大きな構造減衰を与える方法や接触判定を緩くする方法などがあります。また、摩擦を含む接触において剛性マトリクスが非対称となることが考えられる場合には、
非対称ソルバを選択する方法もあります。
(その他)
これらの対応策意外に、静的な現象にも関わらず
陽解法の動解析でマススケーリングを適用するなどして解析時間を短縮しながら無理やり解析してしまうという方法があります。陽解法では収束計算をしないため比較的安定的に解析を実施することが出来ます。この辺の話は別な機会に。。
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