マススケーリングを理解するためには、まず
クーラン条件について知る必要があります。最初に
クーラン条件の記事を読んでおいてください。
動的陽解法において時間増分は計算時間を左右する非常に重要なファクターです。時間増分を決める主なパラメータとしては、要素サイズ、弾性率、密度があります。
クーラン条件により、構造中を伝わる応力波の速度が遅ければ遅いほど解析に必要な時間増分を大きくすることができますので、これらのパラメータの内、密度を大きくして応力波の速度を遅くし、時間増分を大きくしてやろうという考え方がマススケーリングです。
マススケーリングの使い方には大きく分けて次の2種類あります。
準静的解析におけるマススケーリングの適用方法静的として近似してよい問題は素直に静解析を適用すればよいと思いますが、接触が複雑だったり、非常に不安定な問題だったりすると、静解析ではうまく収束解が得られない場合も多いです。そんな時は収束計算の必要のない陽解法を適用することがあります。陽解法のような動解析で準静的な問題として扱うためには解析対象の時間幅を大きくして、慣性の影響がでないように荷重をゆっくりと与えなければなりません。しかし陽解法ではクーラン条件により非常に細かい時間増分が要求されますので、計算にかかる時間も膨大になってしまいます。そんな時、マススケーリングを適用し、計算時間が短くなるようにします。一般にモデル全体の密度を調整しますので、解析結果にその影響が出ていないことをしっかり検証する必要があります。
動解析におけるマススケーリングの適用方法陽解法の動解析でも目的は同じで計算時間の短縮ですが、動解析の場合は慣性の影響を無視できませんのでモデル全体の密度を大きくするわけにはいきません。しかし複雑な解析モデルには非常に小さい要素がいくつか含まれてしまうことがあり、それらが時間増分を過度に細かくしている原因となっている場合がよくあります。動解析ではそのようないくつかの小さい要素に対し、ピンポイントで密度を調整して時間増分が大きくなるようにします。モデル全体でいくつかの要素だけ密度が大きくなっても計算結果にはほとんど影響しないはずですが、マススケーリング対象の要素の数にもよりますので重量増加率等をチェックし、これもまた解析結果に影響がでていないことをしっかり検証する必要があります。
マススケーリングは非常にお手軽で便利ですが、解析結果に影響がないよう妥当に使うには難しい面もあります。いろいろしっかり検証しながら注意して適用ください。
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