前回の記事 『
設計者CAEとは?そもそも設計者とは?(1)』
前回、私なりに定義した設計者像に基づけば、設計者が行う主な設計作業というのは、技術的検討を重ねながら要求仕様を具現化することです。その時に有効に活用できるCAEとはどのようなものなのでしょうか。今回はこのテーマで考えてみます。
○設計者CAEとは?概念設計と詳細設計設計作業は概念設計と詳細設計という2つの工程に大きく分けることができます。概念設計時にはどのような形状にするのかを技術的検討を重ねながら構想し、大まかな形状を決めていく工程です。詳細設計では、概念設計時に定まった大まかな設計案に対して、実際の製品に仕上げるために細部を作り込み、最終的には制作できるよう部品図まで作成します。
概念設計時のCAE概念設計時は、製品の構造(形状)を何もない状態から決めていく必要があります。具体的な形状を決める前に、設計案としてA案がよいのか、それともB案が良いのか・・、とにかくたくさんの水準を試して正しい方向性を探る必要があります。
そのような段階でCAEを適用するとすれば、簡単なモデルでよいので素早く答えを出し、評価できるような手法が望ましいのではないかと考えます。モデル作成・解析→評価→モデル作成・評価→・・・このサイクルをたくさん回すことが重要です。それらのたくさんの水準の中から設計として正しい方向性を見出していく。その過程が概念設計と言えます。この時解析精度はあまり要求せず、各設計案の相対的な優劣が解る程度で構いません。
これを具体的にCAEでどうやるかとなると、まずはシェルやビームなどの要素を活用してモデル化することが適切なのではないかと考えます。もしくは抽象的な概念モデルをすでに作っておき、パラメータを変えるだけで検討したいモデルがすぐに作成できるようなシステムもよいでしょう。このようなやり方をFOA(First Order Analysis)と呼ぶこともあります。
詳細設計時のCAE詳細設計時にはある程度設計の方向性が定まり、大まかな形状ができていますので、今度は細部の作り込みに入ります。この段階では既に3Dモデルも作成されていますので、ソリッド要素を用いてより詳細な解析が可能になります。しかし、設計者ですのでモデル化に多くの工数を割くことができませんし、まだ設計変更の余地は多分にあります。
そこで、この段階でのCAE手法としては、3Dモデルに対してソリッド要素を用いてメッシュを作成するなど、ある程度最終的な製品形状を再現したモデリングを行うべきだと考えます。もちろん製品によってはシェル要素でないとメッシュが切れない薄板物もありますので、それはそれでシェル要素でモデリングしますが、細部の形状も再現した詳細なモデルを作成します。
この工程で品質上の問題が発見されたなら、直ちに形状を見直して再度計算を実行します。ここにでは、むしろ初めの解析モデルの作成には多少時間がかかっても、モデル修正・解析→評価→モデル修正・解析→評価→・・のサイクルを早く回せるようにすべきだと考えます。この時、有効なのがCADとの連携機能です。このCAD連携機能を有効に活用して詳細形状の作り込みを実施します。その過程が詳細設計と言えます。
設計者CAEに要求される機能とはしたがって、設計者が使うCAEツールとして外せない機能としては、以下の2点だと私は考えます。
- シェルやビームなどの要素を用いた解析モデルが簡便に作成できる。もしくはFOAツールとしてパッケージ化されたものでもよいが、とにかく簡略モデルで簡単に、素早く、解析・評価が可能なシステムが望ましい。
- CAD形状と解析モデルが連携し、設計変更が解析モデルに直接反映されるなど、製品に近い詳細形状で、設計変更に柔軟に対応できるようなシステム。
現在の設計者CAEは既に上記のような機能を有しているものがほとんどなのではないでしょうか。そう考えると、設計者CAEとはその運用方法がポイントになるのではないかと考えます。
ということで、まずは設計者について定義し、そのような設計者が使うCAEはどのようなものが理想なのかについて考えてみました。しかし現状として設計者CAEがうまく機能していない部分が多分にあると思われます。それはなぜなのでしょううか?
次回以降この辺の課題について考えていきたいと思います。
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