前回、設計者が利用するCAEツールはどのようなものが理想なのかを考えました。しかし、それをCAEツールの機能という観点で見た場合、ほとんどの設計者CAEと呼ばれるツールには既に必要な機能を備わっているのではないかと思われます。しかし、実際には設計者CAEを効果的に運用できていない部分もあるのではないでしょうか。今回はその理由について考えてみます。
(これまでの記事)
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設計者CAEとは?そもそも設計者とは?(1)・
設計者CAEとは?そもそも設計者とは?(2)・
CAE専任者は何をする?設計者CAEの問題点ここでは、前回書いた概念設計時におけるCAEの運用方法を"概念CAE"、詳細設計時におけるCAEの運用方法を"詳細CAE"と呼ぶことにします。
(1)概念設計時にCAEを活用したいがCAD形状がない!?多くはCAD形状ありきで解析が行われることがほとんどです。設計案の形状を決めたいのに解析するためにはCAD形状を要求するとは矛盾です。概念設計時にはそれなりの手法を構築する必要があると思います。つまり、概念的な形状で大まかな傾向が把握できるような解析モデルの構築が必要です。この段階でのCAEがもっと活用されたなら、設計開発現場においてCAEがもっと貢献できるようになるのではないでしょうか。
(2)概念CAE、どうやってモデリングしたらいいの?モデル化の方法が解らないから効果的に概念CAEが運用されないとも言えます。シェルやビームなどを用いた解析モデルを作成すること自体はさほど難しいものではありませんが、現象がある程度再現する形で適切な解析モデルを作成すること、そしてその解析結果をどのように設計的に判断するか、については、高度な知識、経験が必要になると考えます。
(1)、(2)の問題を解決するためには、まずは設計者が概念設計時に活用すべき解析モデルの作成方法を標準化し、それが効果的に運用されるように設計者をバックアップしていくことが必要だと考えます。これをやれるのは社内のCAEを専門にする人やベンダー等のコンサルタントだと思います。社内にCAE専任者がいない場合は、ソフトを売るベンダー側でこの辺の運用までサポートしてもらえるようになれば、より効果が上がり、ひいては更なる販売にもつながるのではないかと思います。
(3)詳細CAEで細部にこだわり過ぎるCADモデルを用いる詳細CAEに関してはある程度普及しており、皆さん活用していると思いますが、そのモデル化方法や評価方法に多少問題があると考えます。その多くは細部にこだわり過ぎるということ。
モデル化においては、細かな穴やRをそのまま残したままモデル化してしまうと、うまくメッシュが切れない、要素数が無駄に多くなり計算時間もかかる、結果を見るのも大変、等々、とにかくスピーディーな解析、判断、設計の流れを妨げてしまいます。評価にあまり関係のない細部は削除して、できるだけシンプルな解析が望ましいです。そのためにはCADの機能を効果的に使いながら形状修正を行う必要があります。またそのような機能を充実させていくことが、ベンダー側の役割でもあると思います。
解析結果の評価においては、上記のような細部の応力集中にこだわり過ぎて、なかなか対策が進まなかったり、過剰品質になってしまったり、などがよくあります。そもそも設計者CAEで構築する解析モデルにおいて、応力集中部を評価すべきではないと思います。例えばホットスポット応力と切欠き係数、ホットスポット応力基準のS-N線図を用いて評価するなどの方法が合理的だと思います。
(4)そもそもCAEの運用方法を社内で明確にしていない。これはある意味私のようなCAE専任者の責任なのですが、社内でどのようにCAEを運用するのかということを明確にしていないことが原因としてあると思います。前回書いたような運用方法を明確にして標準化し、設計者に対して周知徹底すれば、ある程度は改善できるのではないかと考えています。
こう考えると実は設計者CAEを有効活用するにはツールがどうのというより、如何にCAEを効果的に活用するかという運用上の戦略が特に重要なのではないかと考えます。もちろん簡単で使いやすいツールであることに越したことはありませんが、そればかりを前面に出すと、前提知識がなくとも誰でも使えるかのように勘違いされ、導入したけれどうまく運用できず効果を上げることができない、なんてことに・・・。
私もこれを書くにあたっていろいろ考えを整理してみました。そうして自分自身のやり方に関してたくさん問題点が見えてきた気がします・・。これからはもう少しCAEが効果的に運用できるように努力していきたいと思います。
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