先日書いたように非線形解析を適切に実施するには、それなりのノウハウが必要になってきてなかなか敷居が高い分野だと私は思います。もちろんソフトウェアのオペレーションが難しいということではなく、解析目的や再現したい現象などに合わせて適切な解析を実行できるようにすることが難しいのです。また、解析モデルはできても発散せずに最後まで解析を終了させることにも労力を使わなければなりません。しかもそれに結構な工数を取られることも多いです。
そういった煩わしいことに時間を取られるのであれば、いっそのこと非線形解析をせず、線形解析の範疇で大まかに検討した方が結果的にうまくいくことがあります。
私たちが扱う工学的現象は基本的に非線形ですが、強い非線形もあれば弱い非線形もあります。弱い非線形に関しては従来より線形に近似をして検討することが行われています。しかし強い非線形に関しても無理やりと言っては語弊がありますが、ある仮定の導入や検討範囲を限定するなどすれば、大まかに線形近似することが可能になります。むしろ設計の上流ではとりあえず右か左かの方向性を決めるに当たっては高い精度は要求されず、大まかに検討できればよい場合も多いです。そんなときは本質的には非線形でもざっくりと線形近似して設計検討に用いることが有効です。
ここで非線形の例を構造解析分野で説明します。構造解析における非線形には、材料非線形、幾何学的非線形、境界非線形があります。
材料非線形材料非線形の例としては金属材料における弾塑性、ゴムなどの超弾性などが挙げられます。要するにひずみと応力の関係が直線にはならない材料を使った解析をする場合には材料非線形を考慮する必要があります。
幾何学的非線形幾何学的非線形は大きな変形を伴う現象を扱う場合に考慮する必要があります。例えば長尺物の解析をすると材料のひずみは小さいですが、見た目にも解る程の大きな変形を伴います。線形解析では荷重の方向は変形前の状態を基準に定義されますので、変形が大きくなって荷重の方向が部材に対して変化するような場合には、力のバランスが変化するために幾何学的非線形性が無視できなくなります。
境界非線形簡単に言えば接触現象です。多くのアセンブリされた製品は接触状態でありますし、落下・衝突現象などはそもそも接触を考慮しないと現象そのものが再現できません。
まずは線形化を検討するこれらの非線形現象をどうやって線形に置き換えるのかがノウハウです。例えば幾何学的非線形解析が必要な大きな変形が伴う現象でも、剛性を評価したいのであれば線形解析における変位の相対評価等で事足りる場合もあります。ゴムのような非線形材料を扱う解析でも、入力される荷重値が限定されれば、その荷重値で接線を引いて線形化するとか、接触についても予め接触する位置が解っているような場合は、剛体要素とその解放自由度の設定をうまく使って接触を模擬することも可能です。
重要なポイントは現象をよく分析して解析する範囲を限定してしまうことです。良く解らないからといってすべてモデル化すると非線形解析を実施せざるを得なくなってしまいますが、範囲を限定することで線形に近似することも可能な場合もあるということです。
うまく線形に近似できれば非線形解析よりは圧倒的に早く解析できますし、計算力学的なことで悩むことも少なくなりますので、本来の設計検討に集中することができるようになります。色々メリットありますので、安易に非線形解析を実施するのではなく、できることなら線形解析に近似することを考えてみてはいかがでしょうか。
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