有限要素法によって、時間的な変化を逐次解析する場合に用いられる直接時間積分法には、大きく分けて陰解法と陽解法があります。ここでは陽解法について説明します。陽解法は衝突、落下解析など、非常に短い時間に起こる衝撃的な現象を解析するのに広く用いられています。
まずは変位の時間的変化に関して
テーラー展開を適用します。公式集における
テーラー展開の項、形式①の公式を用いることで下式を求めることができます。
・・・(1)
・・・(2)
{u}:変位ベクトル(1ドット付きは速度ベクトル、2ドット付きは加速度ベクトルを示す)、t:時間、Δt:時間増分
下付きの時刻の添え字はその時刻におけるベクトルであることを示します式(1)は時刻tからみて時刻t+Δtにおける変位{u}を予測する式で、式(2)は時刻tからみて時刻t-Δtにおける変位{u}を予測する式です。Δtを-Δtに置き換えただけですね。このように時刻tを基準としてその前後の時刻の予測値を用いる方法を中央差分法と呼びます。陽解法では主に中央差分法が用いられることが多いです。
さて、式(1)、(2)を用いて速度ベクトル、加速度ベクトルを求めていきます。
まず、式(1)+式(2)として整理しますと、下式(3)が得られます。これはt-Δt、t、t+Δtの3つの時刻における変位ベクトルから加速度ベクトルを求める式です。
・・・(3)さらに、式(1)-式(2)として整理しますと、下式(4)が得られます。これはt-Δt、t+Δtの2つの時刻における変位ベクトルから速度ベクトルを求める式です。
・・・(4)ここで時刻tにおける運動方程式は下式(5)のようになります。
振動の運動方程式に対して自由度が大きいためマトリクス形式になっていますが基本は同じですね。
・・・(5)
[M]:質量マトリクス、[C]:減衰マトリクス、[K]:剛性マトリクス、{P}:荷重ベクトル、
{u}:変位ベクトル(1ドット付きは速度ベクトル、2ドット付きは加速度ベクトルを示す)
下付きの時刻の添え字はその時刻におけるベクトル・マトリクスであることを示します式(5)に式(3)、式(4)を代入して整理しますと、下式(6)が得られます。
・・・(6)
[M]:質量マトリクス、[C]:減衰マトリクス、[K]:剛性マトリクス、{P}:荷重ベクトル、{u}:変位ベクトル、t:時間、Δt:時間増分
下付きの時刻の添え字はその時刻におけるベクトル・マトリクスであることを示します式(6)が中央差分法に基づく陽解法の基本式になります。式(6)の意味するところは、時刻t+Δtにおける変位は、時刻tと時刻t-Δtの状態から求めることができるということです。この時、左辺の( )内のマトリクスは
対角マトリクスになるようにしているため、連立方程式を解く必要がなく、代数的に{u}を求めることができます。従って計算効率が非常に高いです。
ではなぜ、左辺の()内が対角マトリクスになるのか。通常左辺()内に含む質量マトリクスや減衰マトリクスは対角マトリクスではありませんが、陽解法を用いる場合は、質量マトリクスに集中質量マトリクス、減衰マトリクスにレイリー減衰のα項を用いるなどして、左辺の( )内が対角マトリクスになるようにしています。この辺の話はまた別な機会にまとめるとします。
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