■陰解法と陽解法の概念的特徴すでに
陰解法、
陽解法の理論的な説明を
技術メモにまとめていますが、今回はそれぞれに違いを概念的にまとめみたいと思います。実務的には理論的な詳細を理解する必要はなく、それぞれの特徴を概念的に認識しておけば十分です。
陰解法、陽解法、それぞれの特徴を列記します。
陰解法の特徴静的、準静的な問題、動的な問題でも比較的長い周期で振動するような問題の解析に適している。
時間増分を大きくしても安定して解を得ることができる
連立方程式を解く必要があるため、1時間増分当たりの計算量が多い
陽解法に比べて大きなメモリ容量が必要
陽解法の特徴衝突、落下問題などの非線形性が強く、非常に短い時間で起こる現象の解析に適している。
安定した解を得るためにはクーラン条件を満足するような時間増分に設定する必要がある
連立方程式を解かないため、1時間増分当たりの計算量が少ない
陰解法に比べて小さなメモリ容量で済む
■連立方程式を解く必要が”ある”とか”ない”とかの意味有限要素法で解くべき連立方程式を簡単に書くと、結局は下式(1)のような形式となります。これはバネの公式kx=fと基本的には同じです。
・・・(1){x}は未知数で、変位だったり、加速度だったりしますが、いずれにせよこの式の目的は{x}を求めることです。ここで式(1)の中身を陰解法と陽解法で比べてみますと、
陰解法の方程式陰解法では下式(2)のように、[a]マトリクスの各成分には任意の値が入っています(実際は0が多かったりもするのですが)。つまり対角項以外も0以外の値を有するマトリクス形式となります。このようなマトリクスは連立方程式を真面目に解く必要があるために計算負荷が高いです。更には計算に必要なメモリ容量も大きくなります。
・・・(2)このようなマトリクスになるのは、左辺に対角化できない剛性マトリクス[K]が含まれているからです。詳しくは
こちらを参考にしてください。
陽解法の方程式一方、陽解法では式(3)のように、[A]マトリクスの対角項以外が全て0となっています。このような方程式は連立されておらず、各行単独でxを求めることができます。複雑な連立方程式を解く処理を必要としないため計算負荷は軽く、必要なメモリも少なくて済みます。
・・・(3)このようなマトリクスになるのは、左辺に対角化できない剛性マトリクス[K]が含まれないためです。詳しくは
こちらを参考にしてください。
これを精度的な観点から見ると、方程式が連立されている陰解法では、時刻t+Δtの値を決めるに当たって、同じ要素に属する時刻tにおける節点の値と時刻t+Δtにおける節点間の相互関係が影響します。陽解法では方程式が連立されていないために、時刻t+Δtの値を決めるに当たって、同じ要素に属する時刻tにおける節点の値のみが影響します(下図参照)。

[ 図1 ]したがって陽解法では、このように直前の値の影響しか考慮されないという特徴があるため、時間増分を大きく設定し過ぎると解が発散してしまいます。これを防ぐために
クーラン条件を満足するような短い時間増分に設定する必要があると考えられます。
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